ぶるどり

遊んだゲームの記録

人狼とテキストアドベンチャーの天才的な融合を果たした「グノーシア」というゲーム(ネタバレあり)

元は2019年6月20日PSVitaで発売された。

そのアップデート版としてSwitch版が2020年4月30日、Steam版が2022年1月23日に発売されている。

 

前々からTwitter上で、一人で人狼アナログゲーム汝は人狼なりや?』)を遊べると噂だったグノーシアをSwitch版でようやくプレイ。

2023年はまだ1月であるにも関わらず、今年のMGOTYはこれだな……と思えるくらい、とにかくものすごいゲームだった!

 

そこまで致命的なネタバレはしないつもりだが、とにかく情報なしで体験して欲しいと思える作品なので、少しでも気になってきたな……となったらすぐにこのページを閉じて作品を買って遊んで欲しい。私を信じて欲しい。疑われたら哀しみます。土下座したって良い。頼む!

 

・基礎となる人狼部分がしっかりと楽しめる作り込み!

人狼について軽く説明すると、毎晩一人村人を食い殺す人狼が村に紛れ込んだので昼のうちに誰か一人を決めて首吊り処刑して行こう! 人狼を全員吊れれば村人側の勝利、村人が減っていき人狼過半数を超えたら人狼側の勝利というゲーム。

昼に吊る人間を決めるに際して1日に1人指定して人狼か人間かを判別できる力を持った能力者が居たり、その能力者であると人狼が嘘をついたりしながら議論・推理しあうのが人狼の面白さとなっているが、グノーシアでも勿論その面白さはしっかりと再現されている。

 

役職はグノーシア内では名称が異なるので一般的な人狼用語で説明すると、占い師、霊能、狩人、共有者の4種+狂人と妖狐(ハムスター)が存在。

これら役職の有無や自分の役職、参加人数は最大15人までを自由に選べ(オススメでおまかせも可)1プレイはサクサクやれば5分程度、長くても20分かからないくらいでストレスなく遊べる作りとなっている。

 

昼の議論は行動をコマンドで選べる形式となっており、自分から率先して吊りたい人物(村人側なら怪しい人、人狼側なら生贄にしたい人)が疑わしいと喧伝したり、逆に吊りたくない人物の疑いを晴らしたりする事が出来る。

AIで動いているNPC達にもある程度傾向が決まっており、議論を振り回される事もあれば、賛同したり賛同しなかったりで上手くコントロールできる事もある。

 

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数値では見えないものの、行動によって「信頼度」「疑惑度」等が増減しているのがなんとなくわかる……くらいには結果に反映されるバランスとなっており、コツコツ溜めてきた信頼が結実するのが(しなくても)楽しいのは勿論、相手が人狼だった場合にはわりと本気で「騙された……!!!」と感情を揺さぶられるくらいよく出来ていて本当に楽しい。

 

 

議論する上でAIに不自然さや破綻は感じないし、普段無口なキャラが周りを疑いまくって怪しいとか、そもそも占い結果がおかしい等の推理も程々に楽しめて人狼ゲームとしても本当によく出来ていると感じた。

 

人狼ゲームを円滑に進める為、回数を重ねることでプレイヤーのレベルが上がりステータスを伸ばしていける要素もある。

カリスマやロジックを上げれば自ら議論を先導して吊り先を自由に選べるようになるし、かわいげやステルスを上げると吊られたり人狼の食い先になりにくくなったりする。

単純にゲームを遊びやすくするための嘘を見抜く直感、嘘がバレにくくなる演技力等もある。

私はかわいげステータス特化にしたので基本的に最終日まで生き残りAI達の議論をそっと後押し出来るものの、確実に黒だとわかっているキャラを吊るような誘導をすることは出来ず、大分もどかしいゲーム展開が多かったがそれはそれでめちゃくちゃ楽しかった。カリスマやロジック特化だとゲーム体験が変わると思う。

 

プレイヤーだけでなく、シナリオを読み進めていくとAIキャラもステータスが上がっていき、ゲーム展開が段々と変化していくのも秀逸だった。

キャラ毎に嘘がバレやすい等のステータス差がある為、最初のうちは吊りやすいキャラをひたすら吊っていくというゲーム展開になりがちだったものが、

疑いを別のキャラに逸らすとか真占い師確定だから信用しよう、占いで黒出たキャラを吊っていこうといった行動が増えていき、人狼ゲームらしさがどんどん増していく。

そういった行動を使いはじめたキャラが出始めると、同じ行動を習得するイベントが発生するようになったりするので、更にイベントを進めたくなるプレイサイクルが優秀だった。

この段々ゲーム展開が変わっていく様子は、まるで人狼ゲームをはじめたばかりのプレイグループが段々セオリーをわかっていって成熟していくような、成長過程の早回しのように感じて、凄すぎる……! となった。

 

ただ、これは人狼に慣れている方向けの注意点となるが「初日に共有者の片側だけCOして狩人に守られながら議論を進める」「昼のうちに占い先を決めておきほぼ確の白を増やしていく」といった複雑な事までは出来ない。

占い師ローラーや、妖狐(ハム)が居るから怪しくても占い師CO者は残そうといった誘導はゲームを進めていくとアンロックされていくものの、ガチガチに推理ゲーをやりたいタイプの人狼プレイヤーは物足りないと感じる可能性がある。

また、後述するがシナリオの為にゲームがちゃぶ台返し(キャラの性格上うっかり人狼であると明かしてしまったり、なんかもう……めちゃくちゃになったり)される事もあったりするので、そういうので興ざめしてしまう可能性もある。

※実際に人狼やっててもうっかりカードめくれちゃったり、初心者さんが「GMさんがこういう(身振り手振り)ポーズしてたって事は、この人が人狼って事ですか?」と聞いて真占い師が確定してしまったり、プレイスペースを閉める時間が近づいてきて途中でハイ終了……くらいのアクシデントはあるあるなので、そういうもんかなと思えば個人的には気にならなかった

 

・シナリオ、キャラの魅力を最大限に引き出すゲーム作りの上手さ

ここまででもグノーシアは十分傑作と言って良い……のだが、このゲームの真骨頂は何よりシナリオである。

本作は宇宙船という密閉空間の中で、人間を襲う謎の存在であるグノーシア(これがいわゆる敵勢力である人狼)が確認されたので排除しよう! という形でゲームが開始する。

プレイ開始してすぐ判明するので言ってしまうが、主人公とセツというキャラクターの2人はグノーシアの存在が発覚~勝利or敗北までの数日間を繰り返しループしている。

いわゆるリプレイ・ループものではあるのだが、毎回登場人物や誰がグノーシアなのかといった結果は異なるため、いくつもの平行世界を体験してると考えたほうがわかりやすいかもしれない。

この設定のおかげか、(ほとんどなかったはずだが)見たことのあるイベントが発生したり、議論中の台詞が同じパターンになっても「私にとっては何度か見た光景だがこのキャラにとっては初めての状況だもんな」と言った解釈ができて、AIの台詞パターンが気にならないという恩恵があったように感じる。AIと繰り返し遊ぶゲームとして設定の相性がとても良い。

 

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※このイベント、普段は無口なレムナンが急にテンション高くなるのでめちゃくちゃ好き

繰り返し遊ぶゲームとして優秀な点として挙げたい要素としてはもう一つある。

真剣に人狼を遊びたい人にとっては興ざめとなってしまうかもしれないが、イベントが発生すると場合によってはキャラが消えたり、無効試合になったりする。

個人的にはそんなことある!? と笑えるイベントも多く、敢えて「外してくる」事で繰り返し遊んでも単調にならず、最終的に120回LOOPしたにも関わらず最後までずっと楽しめる事が出来た良い要素だと感じた。

正直精神と時の部屋があったとしてもリアルで人狼120回も飽きずに黙々と続けられる自信はないし。

 

SFという舞台設定も良い。登場人物は14名いるのだが、このしげみちをはじめとしてとにかく全員個性が強烈で会話やイベントがとにかく面白い。

最初はただなんとなくゲーム部分が面白い……と遊んでいたと思ったら、気がつけばこのキャラの事が知りたい! というモチベーションが高まっていき、ただ勝利を目指すだけでなく、このキャラを生き残らせた状態で勝ちたいといった勝利条件が自分の中で切り替わっているのがゲーム体験として最高だった。

また、ゲームを繰り返してキャラの性格や個性が把握出来てくると、最後に残すと怖いから夕里子先に吊っとこう、ラキオは大抵最初の方に吊られるけど味方として残るとめちゃくちゃ頼もしい……とかリアル人狼でもよくある思考が生まれたりする。

 

勝利だけでなく、最後にグノーシアのSQと二人だけになって敗北……といった条件で発生するイベントもあったりする。グノーシアの時だけ見せる表情もめちゃくちゃ良い……。

同じゲーム・システムで遊んでいるのにも関わらず、途中からジャンルが人狼ゲームからテキストアドベンチャーゲームに変わったぞ……? どういうこと?

 

また、このテキストアドベンチャーに変わる頃には前述した「オススメおまかせ設定」も開放されており、未確認のイベントが発生しやすい役職・人数をある程度ランダムに自動設定してくれるというのも偉い。

人狼を黙々と遊んでいるうちに突発的に発生するイベントを楽しむのも良いし、この組み合わせでイベントあるはずだから考えてみよう……と取っ掛かりを元にイベントを追うのも良いし、プレイスタイルの自由さを許容しているのが本当に素晴らしい。

その上で、この「役職・人数」を「手動で設定する」ことで発生するイベントなんかもあったりして、それに気づいた時は思わず声出たしゲーム作りの天才かよと思った。ブレイブリーデフォルトのメタ的な隠し要素を楽しめる方はめっちゃ楽しめると思う。

 

シナリオの結末としても、ループ・リプレイものとしてかなり上手く整合性が取れていたし、結末を見た後だとゲームを遊ぶ際の感情がハッキリ変わるなと感じさせるめちゃくちゃ上手い作りになっていた。

 

クリア後も、もうちょっと余韻に浸るか……と思っていたら、そこでまたしてもやられた。本当にこのゲーム作った方は天才だと思った。

ネタバレありと書いたので多少詳細はぼかすものの書かせて欲しいのだが、ここにイベント用意するということは、プレイヤーがその遊び方をするだろうという信頼がなきゃ用意出来ないよね……? 最悪気づかずに終わってしまうプレイヤーもいるのでは……? そこまでプレイヤーを信じているの……? ありがとう……。

というもので、なんかもうびっくりした。めちゃくちゃ楽しんだプレイヤーへのご褒美という感じで本当にもう最高だった。

 

昨晩クリアしたが、今日もずっと凄すぎる……しか言ってないくらい凄すぎた。

語彙力がもう追いつかないレベルで凄かったので、願わくば少しでも多くのプレイヤーが増えて欲しい……と思うのであった。