2024年11月14日発売。
本作『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』HD-2Dリメイクは、1988年2月10日にFCで発売された同作のHD-2Dリメイクとなる。
HD-2Dリメイクとはドット絵と3Dグラフィックを組み合わせた懐かしくも新しく感じられる表現方法で、これまでにも『OCTOPATH TRAVELER』や『トライアングルストラテジー』、『ライブアライブ』のHD-2Dリメイクなどで使われてきた。

数々の実績がある表現技法で世界が美しく描かれ直した伝説的名作はさぞや最高のゲーム体験となるだろう……と期待していたのだが個人的にはとても合わず、クリアまで遊びきれる自信をなくしたので、ポルトガまで遊んだという序盤となるが感想を書いて忘れることとした。クリアせずに感想を書くのは主義に反するが……書かないと次に進めないんだ、許してくれ。
・ボリュームの増えた探索要素と相性の悪いHD-2D表現
まず大前提として、HD-2Dで描かれた世界は非常に美しい。

原作では洞窟の中であるとしか表現されていなかった数々のダンジョンは、岬のダンジョンは岬であることがわかるようになったり、洞窟もただひたすら穴が続くものや鍾乳洞などバリエーションが豊かになり見て楽しい作品となっている。
しかし、HD-2Dの欠点としてカメラを回すことが出来ないというものがある。
他のHD-2D作品ではダンジョンや街の構造が複雑でなかったり、見えない部分には何も置かない。隠し道があるとしても別の場所からあることがわかるようにする等の丁寧な作りでフォローしてきた。
これが本作においては見えない場所にドアを設置したり、隠すような位置やマップの端にアイテムを置くなど、一つのマップに多くのものをとにかく詰め込んだ作りとなっている。
この為、探索する楽しさはあるものの視線はかなりミニマップに向かってしまい、結果として美しい景色を楽しむ機会が全体的に減ってしまった。
これは、落ちているアイテムに強力過ぎるものが多く一つ逃すと難易度が激変するほどのものとなっている為、見つからなくてもいいさとスルーするには惜しいものとなっているバランスなのも拍車をかけている。
こうした理由により序盤を遊んだ段階でいうと、カメラを傾けたり遠景を見る事も出来なくなったPS版ドラクエ7から劣化した表現という感想だった。
・とにかくボリューム満点の探索要素
本作では大きな要素として、街やダンジョンだけでなくフィールド上にもアイテムや隠しマップが追加された。
原作ではフィールドは街から街、街からダンジョンに向かう際にランダムエンカウントが発生するだけの道でしかなかったが、そこにキラッと光るものや不自然なオブジェクトがあればちょっと寄ってみる探索要素が追加された形だ。
これによってフィールドにメリハリや楽しさが生まれたという側面はあるものの、次の街で手に入る最高級かそれ以上の装備が沢山手に入る為、偶然見つかったら嬉しいではなく、次の街に行く前に周囲のフィールド探索し終えてから行くという作業的な遊びが増えてしまった。
しかもHD-2Dはカメラを回すことが出来ないため、画面上北側は遠くまで見渡せるが東西南は視界が狭く、カメラ回せたらそれだけでこの作業は数分短くなるんだけどな……などと考えはじめてしまい、とにかく苦痛だった。
はがねのつるぎをお店で購入する為にゴールドを稼ぎ、ようやく手に入れた時のあの強さ!!! という感動もなく、ただひたすらフィールドを探索して手に入った装備に付け替えていくだけの作業感はかなりつらいものがあった。
また、船やラーミアでしかいけなさそうな場所がキラキラしているのも道中何箇所か見つけ、いつか行けるようになったら嬉しいな! よりも、新しい移動手段が手に入ったらキラキラ回るだけの作業が発生するのか……とどんよりした気持ちが生まれ目の前が真っ暗になった。
・はぐれモンスターの出現条件が作業的でやや面倒
本作で追加された大きな要素としてはもう1点、はぐれモンスターというものがある。
各マップに1体くらいないきおいでモンスターが出現し、見つければなかまになるというものだ。
この見つけるというのが厄介で、出現条件が朝夜に加えて夕の時間帯のみというモンスターが結構存在しているのも問題だと感じた。
本作の時間帯はフィールド画面でリアル時間が経過すると切り替わる。
原作は歩かないと時間が経過しないので、昼夜で変わるイベントを見るために街の近くで歩きランダムエンカウントが発生するというリスクとリターンのようなものがあったし、すぐ帰れる街の周辺で戦えば安全ということを自然と学べる導線となっていたのだが、今作はそれが失われた形だ。
それで楽しくなるのなら良いのだが、どの時間帯に出現するかはノーヒントなのでGMの脳内当てクイズというか、単純に一つずつ確認していなかったらフィールドで画面放置してTwitter見たりソシャゲやったり……といった作業となっており、ゲーム体験として最悪だった。
ラナルータを覚えれば改善する可能性はあるが、朝マップを確認していなければラナルータで夕方、夕方マップを確認していなければラナルータで夜……といった作業に変わるだけなので、これからあと何十箇所と確認する作業が発生するのかと思うと気が遠くなり意識を失った。
あと最悪の場合、ラナルータは原作だと朝と夜を入れ替えるだけだったので夕方は放置するしかない可能性もあるが……本当にそのままだったら全てを破壊するものになってしまいそうなので考えるのをやめた。

また、マップにはぐれモンスターが存在するかを探れる「やせいのかん」という特技をまものつかいが覚えるのだが、マップに移動してから使う必要がありこれも面倒だった。マップ上に残りモンスター0/1等の表示が出れば一つ一つルーラしてメニューを開いて特技を開いて「やせいのかん」を選ぶという作業がなくなるのだが……。
あと、おそらく人間に擬態しておりラーの鏡を使えば仲間にできるんだろうなと思うはぐれモンスターも居たのだが、「やせいのかん」では近くに仲間にできそうなモンスターが居る! と表示されるだけので、原作遊んだことないプレイヤーは何故かいないと探し回る羽目になるのめちゃくちゃ不親切ではと感じた。
肝心のなかまモンスターはバトルで一緒に戦ってくれるわけでもないのも残念だった。
まものつかいが新しい特技を覚える条件になっているのと、バトルロードというコンテンツ(ドラクエ6のスライム格闘場みたいなもの)で戦わせる事ができる。
バトルロードは負けたら対策を練ったりレベル上げする……とかは必要なく、新しい地域で仲間になるモンスターのHPやステータスはどんどん倍になっていくのでさっさと次行って新しいモンスター仲間にしたほうが良いというバランスで虚無だった。
・バトルのテンポが最速一択
HD-2Dで美しくなった背景に溶け込む活き活きとしたモンスターに期待していたのだが、本作のバトルテンポは通常だと本当にこれで遊べる人は、世を捨て俗世の時間感覚の外側で生きる仙人のような人でないと無理でしょと感じるほどに遅い。
エフェクトが長いとかそういう問題ではなく、攻撃→1秒程度待つ→攻撃→1秒程度待つ→攻撃……という”間”が全ての行動に挟まれて、原作の戦闘よりも遥かに遅くなっている。
このためバトルのテンポは最速でようやくまともに遊べるレベルなのだが、最速にすると待機モーションで揺れ動くモンスターはぶるぶる激しく動くしエフェクトも一瞬で過ぎ去る。敵が倒れた時のモーションも用意されているが一瞬で消えるので、そこにHD-2Dの美しさを味わう余韻などは一切存在しない。
そもそも、本作のコスト的に作りきれなかったのか動きが全体的に控えめで、少ないがここぞという攻撃では動きのあったSFC版や、画面外に飛んだりするくらい動くGB版と比べて画面が寂しいというのはただただ残念だった。
・いばらの道でも戦闘が優しく、時間だけがかかる
本作ではゲーム開始時に難しさを選ぶことが出来る。
その中で歯ごたえが欲しい人向け! と書かれていた「いばらの道だぜ」を選んだ。これは敵のHPやダメージが増えるのに加えて、獲得経験値とゴールドが減って成長しにくくなるという難易度だ。
このおかげでアリアハンですぐに東の方に向かったり、ロマリア到着後にすぐアッサラームへ向かおうとすると全滅しかけて楽しかったのだが、ピラミッドに出てきた今作新規ボスが強くなっているはずなのに特に苦労なく倒すことが出来てしまった。
これは、前述したように探索要素で手に入る装備が強力過ぎる事が要員として大きいと感じているが、それ以上に戦闘バランスがかなり極端なものとなっている事があげられる。
本作ではダメージ計算式が一新されており、攻撃力と防御力が拮抗していたら良いバランス、攻撃力が防御力を下回っていたら1ダメージ、上回っていたら上回っている分だけどでかいダメージという計算式になっているように感じた。
この為、適正地域で戦う限りは安全で、それ以外の遊びはまともに遊ばせないという雰囲気を感じ、船を手に入れた直後に色々と歩き回る楽しさがあんまりなさそうだな……と考えてしまった。

また、ピラミッドのひとくいばこで全滅した際に出た選択肢にもがっかりした。
オートセーブは1回戦闘が行われる毎にされているようなので、全滅時にオートセーブから再開出来るということはほぼ何も巻き戻らずに再開できるということ。
申し訳程度に全滅時の所持金半額も選ぶことは出来るが、ただ損するだけなので雰囲気を味わう人向けでしかなく……せめていばらの道で遊んでるプレイヤーは問答無用で街に戻して所持金半額にして欲しかった。
色々と積み重なった結果、ピラミッドクリア後に生まれて初めてゲーム中に難易度を普通に落とした。難しくもないのに獲得経験値とゴールドだけ減らして間延びさせるだけなのは時間の無駄としか思えなくなってしまったので……ゲームに対する敗北宣言です。
その時に気づいたのだが、優しい難易度はHP1までしか減らない(=絶対死なない)という、ゲームバランスの調整を放棄した雑さも目に入り最悪な気分となった。
・あまりにも雑なルックスAB対応
昨今の配慮の為か、女戦士をはじめとして非常にデザインの悪い調整や、男性女性をルックスABと呼称するなどの対応が為されている。
これ自体は個人的には残念と思うものの、そういう表現を選んで作品を作ったのであれば何も言う事なし……と思っていたのだが、ゲーム中ではチュートリアル含めて一切何の説明もなかったが突然「男性・女性専用装備」という単語が出てくる。
ルックスABとか表現するなら当然性別によるイベントや装備は全撤廃されたものだと思っていたので、言葉だけは変えたが女性キャラで出来ないことは今作でも出来ないよと急に言われたようなもので嘘だろと思った。
ゲーム内で説明しなくてもルックスABとは性別ってこと、わかるよね? みたいなことは確かにわからないでもないが、プレイヤーに甘えた感じで作られているのがわりと不愉快だし、かわいいルックスBの男子キャラやかっこういいルックスAの女子キャラがゲーム内から否定されてる感じが最悪だった。
また、特に最悪だったのがアッサラームのぱふぱふで、ルックスBパーティだと何のイベントも起きないもののボイスがついているくらい力が入ってるのでトロフィーが設定されてそうだなと感じた。恐らく嫌々でもルックスAのキャラを連れてこないとトロコンが出来なさそうなので何もかもどうでもよくなってきた。
一つでも渋々配慮した言葉狩りのようなものがあると、東のやばん人って表現は残っているとそこは何の問題もない表現だと感じてるんですね、といった気持ちが一々湧いてきてしまうのでやっぱよくないよこれとなった。
・総評
他にも、キー配置を変えることすら出来ないとか、リレミトとルーラどちらもMP0になった上にルーラがダンジョン内でも使えるようになったのでリレミトの存在意義がない(しかも、使うと毎回本当にダンジョンから出るけど良いですか?と確認入る)とか、戦闘終了後にSEがたまに極端に小さくなるバグ? のようなものが頻繁に耳に入るので気になるとか、エンカウント率の高さは相変わらずなのでやっぱりモンスターの起きあがりかモンスターメダルが欲しいとか、消耗品をAIが勝手に使うが補充はふくろを選択してアイテムを選択して持たせるキャラを選択して個数を選択してようやく補充できるみたいな作業が挟まるとか、AIがPS2版ドラクエ5より頭悪いのではとか……
遊び切るまでに不満点100個言えるかな? というぐらい調整不足な点が多く、ただただ苦痛が積み重なるだけだった。
勿論、レベルアップ時にHPMPが回復するのでかなり遊びやすくなった等の改良点もある。これによってカンダタなどのボス直前にMPが枯渇気味だった際、あともう少しでレベルが上がりそうだと雑魚敵を倒し、見事レベルアップしてから挑んで勝った時は上手くやれたな~という楽しさも感じた。
ただ、それすらも全体的なバランスで考えるとリソース管理の遊びが完全に失われ、その代わりに何か足されたわけでもないので素直に良くなった所とは個人的には言い難い。
生まれて初めてクリアしたRPGであるFC版ドラクエ3。
SFC版、GB版と、時間を経て移植(当時はリメイクじゃなくて移植って言ってた気がする)されたものを遊んでも、ひたすらに楽しかったはずのドラクエ3が、ここまで遊びたくないと思えるほどの作品としてリメイクされるのは、ただただ悲しかった。