ぶるどり

遊んだゲームの記録

8年ぶりの完全新作「サガ エメラルド ビヨンド」は前作から正統進化! 一方で苦痛に感じる作業も増えてしまった……(やや攻略ネタバレあり)

2024年4月25日発売。
サガシリーズスマホ向けの作品やリマスターなどがコンスタントに発売されていたものの、シリーズとしては2016年12月15日にPSVitaで発売された「サガ スカーレットグレイス」が最新作となっており、遂に発売された「サガ エメラルド ビヨンド」は実に8年ぶりの完全新作となる。


今作は6人5組の主人公が翠の波動と呼ばれる運命のようなものに導かれて旅立つところから物語が始まる……。

・テンポ良く進むイベントシナリオ

フィールドに関しては前作のサガスカから変わらず、マップにいくつかのオブジェクトがあるのでそれを選ぶとイベントかバトルがはじまるという形でダンジョン探索などの要素はなし。
また、主人公毎に目的は異なるが進め方は全主人公共通で、翠の線に導かれて進むと異なる世界へ旅立ち、青の線(翠と比べると寄り道イベントのようなニュアンス)を進んでいくとその世界の事件に巻き込まれるという形になっている。

基本的にはその世界でいくつかの事件を解決したりしなかったりすると別の世界へと旅立っていけるので、いくつかの世界を巡りながら目的を達成していくというシナリオの進め方となっている。

先に従って進んでいくだけだと少々味気ないのでは……と思いながら遊んでいたのだが、基本的には2,3本の線が選択肢として表示されており、別の選択肢を選んでいたらもしかしたら……という含みも感じられるイベントも豊富で、自分で選んで進んでいるという感覚はかなりあった。
ロマサガ以降のフリーシナリオは、何が、どのタイミングで、条件となっているのか把握がしづらいという部分があったが、今作では明確にあの時あの選択肢が……というのがわかりやすいので、他の周ではあっちを選ぼう! と周回プレイを楽しみやすい作りになっているのだなと感じた。

なお、シナリオに関してはおよそ令和の時代とは思えないような説明がかなり省かれ勢いだけで進むようなイベントが多く、言ってしまえばGB時代並のテキストとなっている。
だが、この簡素で一見へんてこなシナリオで進む所がサガらしさという点で一役買っており、好みは分かれそうだが個人的にはかなり楽しかった。


また、本作は戦闘がとにかく楽しいのでシナリオのテンポ感としては相性バッチリで、戦闘を楽しんで欲しいが為にもこのようなテキスト感になったのだとは思われる。



・とにかく楽しい、サプライズだらけのサガエメバトル!

バトルに関しても基本的にはサガスカと同じく5人パーティで、毎ターン回復するBPというパーティ共通のリソースで技を選び、タイムライン通り左から右に向かって順番に行動が行われていくタイプのコマンド式RPGとなっている。

BP消費の高い技ほど強かったり特殊な効果を持っているがBP効率は悪い為、基本的にパーティ全員で技を使ったほうが強い。

また、技によっては緑のマスがタイムライン上に伸びるので、これを味方同士で繋げると「連携」が発動し、威力が上がったり「オーバードライブ」という追加行動が発生したりと良いことづくし!

技毎に行動補正が掛かっており位置が左に寄ったり右に寄ったりするので、どうにか連携を繋げられるよう技を選んで……選び直して……と1ターン毎に悩めるのがめちゃくちゃ面白い。

他にも、左右2マスに敵も味方も居ない状態で行動すると「独壇場」という余ったBPを全消費して一人連携をしだすというシステムも存在する。
この時は相手の特定行動に合わせて発動させる必要があったり、数ターン溜めてようやく発動するような技もランダムで発動することがあるという無法っぷりで、独壇場を狙ったほうが強い場合もある。


ただし、これらの要素は敵も同様の条件で発生する。うっかり連携させたり、独壇場させるとあっさり全滅してしまう。


この為、連携をしたい……が、相手に連携されたらまずいので一人は妨害できるように差し込んでおく必要があるなど、ただ単に強い技を連携繋げられるように選べば良いというわけではない所が最高!
また、何も行動しなかったキャラクターは「防御」してくれるため、敵が全体攻撃を構えている時は可能な限り少人数を行動させたほうが良い、なんて選択肢も生まれたりするのでとにかく毎ターンコマンドを選ぶのが面白い。

また、「独壇場」は前述の通り左右2マスに敵も味方も居ない状態で行動が条件となるので敵味方が少なくなればなるほど発生しやすくなる=味方がやられてピンチ! な時や敵をあと一人まで追い詰めた! という終盤ほど発生しやすい。
劣勢になっても一発逆転チャンスが狙えて最後まで諦めずに戦ったり、優勢でも最後まで気が抜けないという辺りがかなり熱い戦闘バランスとなっている。


一方で、独壇場やオーバードライブは「装備している技がランダムで選出」される為、ある程度制御出来るもののかなり運任せなシステムとなっている。

PS5の体験版でも戦える御堂編序盤の最凶難度で戦える敵なんかは、運が良ければなんとか勝てる……くらいなバランスとなっており、かなり大味。
勿論、しっかり対策と1ターン毎の選択を適切に行わなければ運任せであっても勝てないのだが、最後の最後の詰めがどうしても運任せになりがちというのは好みが分かれる要素ではあった。

後述するが、御堂編の最凶戦をやってる間は「戦闘以外でやれることがない」為、強敵に勝った時はやれるだけのことをやりきった勝利という満足感が高かったが、戦闘以外の要素が解禁されて以降は運ゲーに対する不満が強くなってしまった。

 

・戦闘毎に毎回チェックする面倒くささ 「せんせいの試練」と「アイテムトレード」

前述の通り戦闘がめちゃくちゃ面白く、シナリオのテキストもサガらしさに溢れてテンポ良くこれだけでもう文句なしの最高傑作となっている。
……だが「せんせいの試練」と「アイテムトレード」という2つの要素が何もかも台無しにしてしまっているのが今作の残念な点となっている。

 

まず「せんせいの試練」なのだが、これは戦闘中に最大3つ特定の条件を満たすと追加報酬がもらえるというもの。

前作ではバトル毎に条件が設定されており、達成できたら嬉しいけど基本的に無理なものは無理……というちょっとしたおまけのような位置づけだったのだが、今作では自分で条件を選ぶことが出来る。
そうなると必然的に達成しやすいものを選ぶことになるのだが、条件を達成すると数戦は同じ条件を選ぶことが出来ない。
この為、戦闘終了後にはほぼ毎回メニューを開き、せんせいメニューを開き、せんせいの試練を選び、達成しやすいものをいくつかの候補から3つ選び直すという作業が発生してしまう。
せめてこの画面をワンボタンで開けるショートカットキーがあれば良いのだがそんなものはなく、必ず開いて選んで閉じるまでの数十秒がPS5で遊んでいてもかかってしまうというのがちりつもではちゃめちゃにストレスとして発生してしまうこととなる。


また、達成しやすく繰り返し受注できる試練とは別に特別な報酬をもらえる1回限りの試練もあるのだが達成条件はやや厳しく設定されており、しかも運任せに依るところが大きいときたもんだ。
本来もらえる報酬を1枠潰して、運任せで達成できないとしばらく報酬が貰えないまま数戦重ねることとなり、これがまた結構なストレスとして襲いかかってくるのが個人的にはかなり苦痛に感じた。

 

「アイテムトレード」はその名の通り物々交換となっているのだが、本作には通貨による買い物というショップのような概念は存在しない為、実質的に欲しいアイテムはここで手に入れる必要がある。

この物々交換なのだが、なんと戦闘毎にラインナップが変化する。
装備を強化するためには「せんせいの試練」を戦闘毎に設定して素材を集め、運任せの「アイテムトレード」を戦闘毎に確認して欲しい素材に交換する必要がある。


また、装備を強化すると今度は素材を10個で上位の素材1個に変換みたいなレートのアイテムトレードを行って上位素材を手に入れる必要があり、それで装備を強化するとその上位素材を4個手に入れる必要があり、それで装備を強化するとまたその上の素材を……というめちゃくちゃ疲労感の溜まるわらしべ交換作業を地道に続ける必要がある。

もちろんこの「アイテムトレード」もワンボタンで開けるショートカットキーがあれば良いのだがそんなものはなく、かつ、どれがいるものかいらないものか判別する必要もあるので戦闘毎に毎回1分近くは確認作業が発生してしまう。
このため、戦闘2分、戦闘後のつまらない作業にも同じくらい……といった時間バランスで毎戦闘挟まるので本当に最悪の体験だった。多分プレイ時間の半分近くはメニュー開く時間になってしまっている。

じゃあもうこの2つの要素縛りでやれば良いじゃんと思ってしばらく触らず遊んでいたのだが、Diva No.5のラスボスが詳細は省くがしっかり装備を作って対策しないと苦戦するタイプで、もちろん万全の対策は出来ず一部状態異常が耐性50%で食らったらほぼ全滅くらいな勢いだったのがめちゃくちゃ萎えた。

正確に言うとラスボス戦自体は楽しかったのだが「せんせいの試練」と「アイテムトレード」というつまらない作業をやらなかった分だけ苦戦していると思うとかなり残念で、初見殺しの2回死んだだけでそれぞれ手持ちの対策だけでギリギリ勝てたので良かったが、運ゲーで全滅してたらもうクリア諦めてたかもしれないほど嫌だなと感じてしまった……。

 

・総評

今作の戦闘は前作からの正統進化で、多少運任せな部分は増えたもののドラマチックな展開が起きやすく、とっつきやすさも増して本当に素晴らしい。
だが、それ故に遊べば遊ぶほど戦闘やシナリオは周回プレイ前提の洗練された作りなのに対し、トレードと試練というシステムだけが周回プレイの障害となり悪目立ちしてしまう。
このせいで余計に「戦闘以外の余計な部分が削ぎ落とされて洗練された前作」が本当に好きだったなという気持ちが湧いてきてしまうので御堂編とDiva No.5編クリアで箸休めとした。

トレードと試練をパッチで改善するか、改善された翠色の野望を出して欲しいと願いながら一旦ゲームクリアです。
よく考えるとサガスカもVita版はロードが長すぎて1周で諦め、緋色の野望が出てからトロコンしたのだった。完全版を待とう!