ぶるどり

遊んだゲームの記録

語り継がれるべくして語られる、伝説的名作RPG「ロマンシング サ・ガ2」

1993年12月10日発売。

年の初めに燻っていたサガスカ熱が燃え上がり遂にトロコン!

おかげでサガ熱が高まり未プレイだったSaGa3をクリア!

その勢いのまま、いよいよ最後の未プレイ作品であった伝説的名作RPGロマンシング サ・ガ2』を遊んだ! 2023年はロマサガ230周年おめでとう記念年でありサガエメも発表されたし、まさにサガ記念年と言えよう!

 

なお、何故ロマサガ2が最後の未プレイ作品になるかと言うと初めて触れたシリーズ作品がサガフロで、遡ってロマサガ3を遊んだ後に初代(※初代ではない)からやるか! とロマサガを遊んだ事に起因する。

 

ロマサガ3からのロマサガは主人公を一人選び広大な世界を自由に旅するフリーシナリオシステムという点であまり変わり映えを感じられず、ダンジョンの一本道でモンスター全員を倒して(フルフルが出たらリセットして)からようやくガラガラになったダンジョンの探索開始! というのがかなり作業感が強く、これなら……ロマサガ2はスルーで良いか! という判断をしていたのでした。

なんで急にロマサガの悪口はじまった? それはさておき、そんなこんなで遊ばずじまいだったロマサガ2でしたが、令和の時代にようやく遊んでみた結果……いや、これがロマサガの後、ロマサガ3の前に出てくるのはおかしいだろ!!! と叫んだ。

 

・唯一無二の面白さを秘める天才的な伝承システム

物語は小国「バレンヌ帝国」へ、世界を救う存在と語られていた七英雄の一人であるクジンシーが攻め入るところから始まる。

首都アバロンを守っていた第一皇子ヴィクトールは並み居るモンスターをも蹴散らし、かの七英雄であるクジンシー相手にも怯まず強力な剣技である流し斬りを完全に入れる事に成功する……が、それでもなお敗れ去り、その死によって七英雄が如何に危険な存在であるかを証明することとなる。

そんな七英雄に対し皇帝レオンは魔道士から授かった「伝承法」という力を手に、その命を賭してクジンシーへと挑むのであった……。

 

ゲーム序盤、皇帝であるレオンを操作してクジンシーへ勝てない戦いを挑み、ストーリー的にも実際のゲームシステム的にも確実に相手をLP0にして絶命させる「ソウルスティール」を受けて死ぬ。

そして、第二皇子であるジェラールへ「ソウルスティール見切り」を伝承する事で世代を越えてクジンシーに打ち勝つ!

 

これからはじまる七英雄達との時代を越えた壮大な戦いを予感させるに相応しいこの展開は、物語としての面白さもさることながら「一度負けて対策を考えてから次世代で打ち勝つ」というロマサガ2というゲームそのもののチュートリアルとなっている事に唸らされた。

七英雄という名の通り七人存在するのだが、それぞれがクジンシー同様に「一度負けて対策を考えてから次世代で打ち勝つ」事を念頭においたような強力な個性を持つ。

主に炎を中心とした術への対抗策が必要なワグナスや、女性キャラで無効化できるテンプテーションの使い手であるロックブーケ等、一度戦い対抗策を練れば攻略可能……なので、初見は容赦なく殺す! という勢いで、一つの技だけでパーティが壊滅するほどの暴力が一切手加減なく繰り出されるのは実に気持ちが良い。

 

その中でも特にお気に入りだったのがボクオーンだ。

パーティが騙し討ちされて身ぐるみが剥がれて何も持たない状態で敵の地上戦艦に捕らえられるのだが、荷物を守る番兵を丸腰で倒した後は普段通り……とはならず(もしかしたら私が見つけられなかっただけかも知れないが)道中で拾った安物の防具と剣だけのほぼ丸腰状態で七英雄であるボクオーンに挑むという展開は予想もしていなかった。

一般的なRPGであればパーティの数名が役立たずになるような状況でボス戦は有り得ないのだが、これは「一度負けて対策を考えてから次世代で打ち勝つ」事が出来るロマサガ2

武器が不要な体術や攻撃術を得意とするパーティで挑めば勝てるのだから、そのような無茶振りのボスを作っても良いのである!!!

 

かわいいという理由で攻撃術を使える宮廷魔術士とホーリーオーダーを常に入れていたのと、偶然体術を得意とする格闘家が皇帝だった時代での初遭遇だったから良いものの、ボクオーンに挑むまでは本当に荷物取り返すイベントなし? なんかせめて回復とかそういう慈悲はなし? マジでこのまま戦うの? と信じられない気持ちのまま戦闘開始となった。

おかげで唯一無二、かつ、今まで遊んだRPGでは味わえない最高の体験を得ることが出来たのだった。ありがとうロマンシング サ・ガ2……。

 

・天才的な閃きの初採用

後のサガシリーズでは定番となっている「閃き」はロマサガ2から採用された。

当時のRPGにおいて通常攻撃とは異なる強力な技は戦闘経験を積んでレベルアップすることで習得するものだったし、現代においてもスキルツリー等のシステムで取捨選択することが一般的だ。

ロマサガ2では連続で切り刻む剣技を使い続ければ、より多くの回数切り刻む剣技を。切れ味の鋭い一閃を使い続ければ、風を起こすまでの境地に至る。ある程度の技による方向性の中で、ふとした拍子に偶然「閃く」ことで習得する。

 

一言で説明すれば運任せで技が増えていくというシステムなのだが、このランダム性は果たしてゲームにより面白い体験を提供するのだろうか……?

システムの説明だけではわかりづらいが、実際に遊んで見ればわかる。この閃きは実に心地よい体験をプレイヤーに提供する。

 

単純にあと数回戦ってレベルが上がれば新しい技を習得出来るというわかりきった成長よりも、突然技を閃いたほうがテンションが上がる。ランダムな成長という要素は退屈な雑魚戦にもちょっとした刺激を与えてくれる。

その上で、この閃きは内部的に敵が強大であればあるほどより強い技を閃くというシステムになっている所が天才的だ。

これは何を意味するかと言うと、ゲームを進めて新たに強大な敵が出てきた時……そう、特に七英雄をはじめとしたボス戦の最中に新たな技を閃きやすいのだ。

この閃きシステムによりボス戦で「流し斬りを閃き、完全に入った……! 勝利ッ!!!」といったドラマが生まれ、よりナラティブな体験を後押ししてくれる。

 

前述したボクオーン戦でもまさにこの閃きが大活躍してくれた。

普段は刀を使いその剣技を披露してくれたイーストガードのジュウベイは生まれて初めて己の拳で戦うこととなる。慣れない戦いに最初は苦戦するも、ジュウベイは戦いの中で気づく。武芸とは根っこの部分で全てが繋がっているのだ。精神を研ぎ澄ませ、気を操るのだ。それは刀を振るう事と同義である……。

というような成長を感じられるかのように、道中ではダメージはないものの相手をマヒさせる不動金しばりを閃き、ボクオーン戦では気弾を閃いてしっかりと活躍してくれた。

また、パーティが残り2名にまで追い詰められたその時、ボクオーンのダブルヒットがジュウベイを狙いこれは負けたか……と思ったその刹那閃く電球! 響き渡る回復音!

そう、ジュウベイは集気法を閃き一命を取り留めることでパーティの1ターンを稼ぎ、窮地を救い、そして勝利へと導いたのだった。

勿論、どこまで行ってもただひたすらにランダムなデータが動くだけのゲーム的な処理でしかないのだが、この劇的な勝利をドラマと言わずして何と言えば良いのか。ドット絵で繰り広げられる小さな死闘に感動が生まれるこの体験こそ、まさにRPG

 

・物語としても天才的な伝承システム

冒頭でも記した通り、ロマサガ2は「七英雄達との時代を越えた壮大な戦い」なのである。

同じくサガシリーズサガフロ2はビジュアルや演出面が最強で、エンディングに至るまでに本当に色んなことがあった……だが、一つも欠けてはならなかった……と、すべての歴史がここに収束する感が味わえて最高なので見せ方は全く異なるものの、「エッグとの時代を越えた壮大な戦い」という描き方の源流を感じられる。

まさか同じサガシリーズであるロマサガ2で既に通過していたやり方だとは思いもよらなかった……。

その上でサガフロ2と決定的に違う点としては「その時代の皇帝がどのように過ごしたかを決めるのはプレイヤー自身」であるという所だろう。そう、サガシリーズと言えばこれもまたお馴染みのフリーシナリオである。

 

同じ場所に行くにしても船から渡るルートや陸路を突き進むルート等複数の手段がある上、出会ったイベントをクリアせずにスルーするという選択肢も勿論あるし、イベントの道半ばで皇帝が死んで次の世代に移ることもある、現実は非情である。

また、進め方によって同じイベントでも皇帝が代替わりしたりしなかったりといった結末も異なるようで、プレイヤー次第で千差万別の物語が紡がれる事となる。特に驚いたイベントは数世代を跨いで復讐してきたモンスターのお話で、まさにロマサガ2ならではの体験だった。

 

このフリーシナリオなのだが、ロマサガ2はそれでいて不親切さを感じないようある程度の導線が惹かれている点が個人的に感心した。

前のロマサガ、後のロマサガ3はいずれも最初からどこへ行くにもお前が決めるのだ! ……と半ば投げ出されるような自由度があったが、ロマサガ2は皇帝として領土を広げる立場や七英雄を倒すという目標が設定されている。

これだけでも十分親切ではあるのだが、最初はモンスターの徘徊するフィールドを潜り抜けたり、大きく迂回して辿り着く必要のあった場所を帝国らしく地域を「制圧(その地域のシナリオをクリア)」するとワールドマップから直接ファストトラベル出来るようになったり、モンスターが出なくなるという恩恵が得られる。

この事により、自然と首都アバロンの近隣から少しずつ世界が広がっていくようなルートが誘導されるのだ。徐々に帝国の領地が広がっていくという体験がゲームシステムとシナリオの両方から上手く噛み合っており、本当に素晴らしい。

とにかくゲームシステムがシナリオを、シナリオがゲームシステムを自然と昇華させており、一切の無駄を感じられない所が本作の天才的な出来栄えに繋がっていると感じる。

 

真面目に書いてたら書くスペースなくなっちゃったので最後に余談として書くんですが、うちのバレンヌ帝国はジェラール後しばらくは宮廷魔術士とホーリーオーダーだけを皇帝として選んでいた所、敢え無くLPが尽きてパーティに残っていた格闘家のダイナマイトが先帝の無念を晴らしてからはパッタリ宮廷魔術士とホーリーオーダーどちらも出なくなったのと、皇帝が死んだら大変なことになるという教訓を得たことからしぶしぶLP高めな肉体派を選ぶようになりました。

という歴史があるおかげで、バレンヌ帝国に生まれながらアニマ術の力をほとんど持たないだと!? やはりあの下賤な格闘家の血が悪いのか!!! といったドラマが生まれたりして勝手に自分の中で盛り上がっていた。楽しい。

 

・何度もパーティ編成を楽しめる天才的な伝承システム

RPGのプレイスタイルは人それぞれではあるので一概にそうだとは言い切れないものの、少なくとも私は一度パーティを組んだ後はゲームシステム側から茶々を入れられない限りはレベルの上がりきった固定メンバーで進めがちだ。

それをロマサガ2は時代の節目毎にパーティが解散されると同時に、今までの冒険で得た知識や技術が「伝承」されることにより誰を選んでも一定の強さが保障される為に固定メンバー選びがち問題が解消されており、幅広くパーティを組むという楽しさが何度も味わえるというのが新鮮だった。

 

シナリオが進むことで開示される新たなキャラクターの中には水属性の攻撃に無敵な種族もいて、まさに水属性を得意とする七英雄へ戦いを挑む時代には採用しよう、といった形で活用する機会が用意されていたりする。

この為に色んなシナリオをクリアしたくなる上に、様々なメンバーを選ぶことでこれもまた「自分だけの物語」となる要素が増えるというのが本当に何もかもが噛み合っている。やはり天才か……。

 

・キャラクターの死亡すら許容できる天才的な伝承システム

ジャンルは異なるが任天堂より発売されている『ファイアーエムブレム』シリーズでは長い間、戦闘中に死亡すると文字通りそのキャラクターは死に、二度と蘇らないというシステムが採用されていた。

キャラクターの死という強烈なインパクトは物語に大きく寄与する……と思う方はいるかもしれないが、正直育てたキャラクターが使えなくなるという損失は耐え難く、その度にリセットしてやりなおすだけのシステムだと感じていた。

 

ロマサガ2でもLPが0になるとキャラクターは死ぬ。文字通り死に、二度と蘇らない。だが、その成長は無駄ではないし、次代に受け継がれていく。

最初の皇帝であるレオンからしてそうなのだから、後の皇帝も勿論同じように何かを託して死んでいく。

キャラクターの死をなかった事にせず、その上でゲームとしては後戻りや停滞ではなく「前に進む」という形でプレイヤーに受け入れさせてくれるゲームは非常に珍しい。

 

ソニーより発売されている『俺の屍を越えてゆけ』シリーズでもキャラクターに寿命があり、死ぬときは死ぬ。また、ロマサガ2のように能力を次代に託していくシステムが採用されている為、ある程度は死を受け入れられるゲームとなっている。

しかし、それでも雑魚戦での不意な死は避けたい。ある程度成長する芽があるので、そこまでは見届けたい……それから寿命を迎えさせてあげたい……結果として、意図せぬ死はリセットしてしまう。

 

ロマサガ2では雑魚戦での死もまた歴史の一部と受け入れ、昇華できる。死が重たすぎず軽すぎずゲーム体験の一部として素直に受け入れられる事がとても心地よい。

 

・総評

正直ロマサガロマサガ3と遊んだ時にはフリーシナリオと癖のあるシステムがサガの魅力であり、ロマサガ2も同様なのだろう……と思っていたが、伝承法というシステムによりシナリオとゲーム体験が密接に噛み合っており、令和の時代に今まで体験したことのない唯一無二の感動を味わえたのは驚いた。

 

サガシリーズ全般に言える事だが主に耐性面でのマスクデータのわかりづらさや術技の効果説明が無いなどの面で古臭く感じるものの、ゲームシステムとしては昨今のオープンワールドに匹敵する程の親切さと自由度のバランスが取れており、遊びにくいという程でもない所も素晴らしかった。

 

子供と子ムーのダンジョンやジャングルにあるもう一つの塔の隠し道等、もう少しわかりやすくすべきだと感じる面もあるものの「絶対にここになにかある」というヒントの出し方は丁寧で文句言いたいが言えないくらいな絶妙な難易度なのも良かった。

 

それらすべてをひっくるめて一つの詩にするエンディング、そこで語られる歴代皇帝で為した偉業の数々が映し出される場面ではかなりうるっと来ていた。これが私の紡いだ物語、まさにナラティブだ。

 

これはシリーズの中でも随一と推すプレイヤーがいるのも頷けるし、今までに遊んだサガシリーズ全てにおいて一、二位を争う出来だと感じられた。つまり、ロマサガ2は最高のRPGである。