ぶるどり

遊んだゲームの記録

最後まで敵たっぷり「リデンプションリーパーズ」(ネタバレあり)

2023年2月23日発売。

ネバーランドカンパニーに在籍していた小林宏至さんが代表を務める、Binary Haze Interactiveの最新作。

Redemption Reapers(以下リデリパ)は『ENDER LILIES』に続くBinary Haze Interactiveの2作目で、2DアクションRPGからSRPGとジャンルがガラッと変わったものの、ダークファンタジーという世界観的な部分は継承している。

 

なお、Steamの開発元から前作にはあった「Live Wire」が消えているが、スタッフロールには名前があったので今作も実質ネバーランドカンパニー作品です。

・最後まで敵とひたすら戦い続けるダークファンタジー

リデリパの世界は国同士の小競り合いなども頻繁に発生するような中世ファンタジー(ファンタジーと言いつつ、特に魔法はない。不思議生物はいるっぽい)で、豊かではないが平和な日々が続いていた所、半年前から突如として「モース」という異形の軍勢が世界に発生するようになる。

 

このモースは人と同じような背丈で、食事などの目的があるわけでもなくただひたすらに人類を情け容赦なく殺戮し続ける。

知性はそれほど高いとはいえず、獲物は基本的に簡素な剣で槍を持って襲いかかってくれば上等という具合であるため個としての能力は雑兵レベルである。

ただし、感情を持たない為にどれだけ仲間が死んだり自らが傷つけられたとしても進軍を止めず、また、どこからともなく湧き出てくるため次第に国々が滅ぼされつつあった……。

 

主人公達の所属する「灰鷹旅団」は様々な奇策を駆使する傭兵部隊で、真っ当ではない戦い方がモースに対してかなり有効な手立てとなっており、物語も勿論、モースとの戦いから始まる。そして、最後まで息をつく暇もなくひたすら戦い続けるだけの物語が続く。

 

・戦い続けるだけで、まったく進展しないストーリー

世界観はもはや人類が劣勢で助かる望みもないというダークファンタジーであるため、戦い続け、それでもなお好転することなく撤退戦が続くのは良い。

「灰鷹旅団」は過去に犯した過ちを悔いており、まるで償いであるかのように勝ち目のない戦いへと身を投じるという設定も悪くはない。

 

ただ、本当にひたすらそれだけが続き、最後の最後まで特に何も変わらず、モースの謎も明かされることはなかった。

その中にあって、プレイヤーにとってはそんなことわかってんだよ……と呆れてしまうレベルの「過去の話は過ちではなく英雄的な行動であった、わかる人はわかってくれるさ」というような種明かしが(人によって感じ方は変わるとは思うが、個人的には)わざとらしくムービーシーンで語られるだけで終わってしまった。

 

ステージには誰かの残した他愛のないお料理メモから、モースが現れる兆候を感じ取れるような不穏な日記等が落ちているのだが、一部キャラの過去話のような内容があるもののほとんどが本当にただのフレーバー程度に留まっている。

どうせならこのテキストで断片的に語られるとかそういうのは、無かったのでしょうか……。

 

最後の最後まで、それっぽい世界観でキャラクターたちがそれっぽい雰囲気の会話をするだけの無味乾燥なストーリー、かつ、魅せ方も上手くないという残念なものだった。

 

・それでもめちゃくちゃ盛り上がる音楽と声優陣

ストーリーに関しては酷評となってしまったが、特段悪い印象としては残らなかった。とにかく雰囲気を盛り上げる近藤嶺さん(『大神』『ベヨネッタ』『ファイアーエムブレム風花雪月』等を担当)の音楽がめちゃくちゃ良い。

過酷で悲壮感漂う戦いの中にあって、静けさも感じられつつ荘厳さも漂うBGMが本当に盛り上げてくれた。

 

声優陣もベテラン揃いで、小山力也さん演じるリーダー格であるグレンが喋る度に心は奮い立たされたし、津田健次郎さん演じる皮肉屋のルグが最後の最後まで同じ調子で、けれども旅の終わりを予感させるような雰囲気で憎まれ口を叩いている最中は泣いてしまった。今書きながら思い出しても涙が浮かんでくるくらい最高の演技だった。

水樹奈々さん演じるカレンのさっぱりとした調子は陰鬱とした世界観にパッと明るさをもたらしてくれていたし、玄田哲章さん演じるウルスの頼もしさにはまだまだ戦えるぞという勇気をもらえた。

そして甲斐田裕子さん演じるサラは前を向いて突き進む凛々しさと過去を悔やむ後ろめたさがめちゃくちゃ上手く表現されていて、だからこそ最後の最後に見せる晴れやかな口調は泣けた。

 

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ネタバレありって書いてあるから今更未プレイの方向けに書くのか? 感あるけど、ファイナルトレーラーで雰囲気伝わるからとにかく見てくれ……トレーラーでは福山潤さんがめちゃくちゃ良い演技してくれてる。このレベルの演技がずっと続くと思ってくれて良い。

 

・釣って倒して釣って倒して釣って倒し続けるシンプルなSRPG

肝心のゲーム部分はというと、本作は最初の数シナリオで仲間が5人全員集まり、そこから最後までずっと同じ5人で戦い続ける事になる。

たまにAIの味方が登場することもあるが、一緒に進もうとすると足並みを乱されて戦死者が出るので勝手に敵を釣って死んでもらうのが一番という程度。最初から最後まで5人だけで戦うと考えるべき。

 

5人のキャラはそれぞれ特徴があり、それらを上手く組み合わせて戦うことになる。

サラは移動力と回避に長けており、特殊攻撃時には敵の反撃を完全回避することができる。

グレンは攻撃力特化で、自衛能力もありバランスの取れた能力を持っている。

ルグは槍使いで、多くの敵に対して一方的に攻撃を行うことができる。

ウルスは見た目通りの頼れる壁役で、敵のダメージを軽減しながら反撃を行うことができる。

カレンは弓使いで、反撃されることはないが反撃することもできない。

 

そんな少人数で、ステージの最初から最後までたっぷり配置されたモースと呼ばれる軍勢を相手取るにはどうするかというと、こうなる。

これは序盤の3人だけのステージなのでここから前述の5人になるまで仲間が増えるし、ガードも反撃ガードにはなったりするが、最初から最後まで基本このパターンだった。

 

基本パターンの繰り返しではあるものの、段々と敵も強く、固くなってくるため思うように進めなくなっていく。

少数ユニットを補う為に攻撃可能範囲にいる味方は連撃に参加してくれるシステムがあるため、上手く利用して手数を増やしていくのが重要となっている。

 

サラが唯一持っている押し出しながら攻撃するスキルは、押し出し後の位置で連撃発動が行えるため、これらの攻撃を駆使するのも重要で一手一手が詰将棋のような楽しさが生まれていく。

ここら辺は5人という少人数だからこそ生まれる楽しさな気はした。

 

なお、時折護衛や逃亡系のステージもあるが、逃亡系は仲間が一人でもやられると敵を全滅するまで次に進めねえと覚悟が切り替わる薩摩武士の集まりなため、ステージの味付けは基本増援である。ひたすらに増援が発生する。世界観通りとにかくモースは群れを為して襲いかかってくる。

 

世界観通りだから良いってものではないのだが、ステージによっては雑魚敵を生み出し続ける中ボスみたいなモースが数体配置されていることもあり、割りとカジュアルに毎ターン敵が増えたりする。

エネミーフェイズは倍速といった甘ったれたオプションもないので、ボコォ(敵が産まれる音)……ザッザッザ(敵が走ってくる音)……を数十秒間聞き続けるという、流石にちょっとうんざりする場合もある。

 

ただ、この増援は攻撃可能範囲に入る前から一直線に向かってくるので、2ターン後に左と右の増援が同時に着弾するのはまずい、1ターン後に左、2ターン後に右となるよう被弾覚悟で突っ込もう。

といった形で上手く数ターン先を考えながら遊ぶ必要が生まれるバランスとなっており、上手く切り抜けられた時の楽しさはかなり高い作りとなっていた。

 

また、明確に切り分けられてるわけではないが、AグループとBグループがいて、先にAグループを倒しにかかろうとしたらBグループも反応する場合があったり、グループ内でも一部の敵だけ感知範囲が広いとかもあったりしたので、単純に釣って倒すだけの繰り返しにもアクセントが生まれるのは良い。

 

とにかくレガシーなSRPGをひたすら遊びたい人向けのSRPGという感じ。

 

・めちゃくちゃ賢い護衛対象と、めちゃくちゃ賢くない護衛対象

SRPGの護衛系ステージと言えば、護衛対象が勝手に一人で戦って勝手に死ぬストレスが最大の敵みたいなところありますよね。

 

なんと! このロルトスという大国のお坊ちゃんは自らが生き延びなければならないということを理解しており、目の前の敵を無視してとにかく味方に近づいてきてくれる!!!(しかも動画では敵の攻撃を回避したのもポイント高すぎる)

 

味方に近づいた後も、一番近い味方の隣接マスに移動するという単純ながらも護衛対象としては完璧(たまに下がりたい時下がれないとかはあったが)なAIで、護衛系ステージを好きになっちゃったな~~~。

 

と思いきや、15章・16章に一人で脱出場所に向かう護衛対象を守るステージがあり、ここが本当にしんどかった。

5人しかいないということは、護衛対象を守る壁も5枚しか存在しないということ。

それなのに敵が4体以上(しかもそのマップからワープ移動系も増える)囲んでくるので、防御の低い弓使いのカレンですら壁にしつつ切り抜ける必要があって大変だった。

 

そこまでのステージはすべてアイテム回収(このゲームは落ちているアイテムをクリア時に回収できない為、拾いに行かねばならない)していたのだが、もし最初からやりなおしになったら流石に嫌だったので諦めたレベルだった。やっぱり護衛系ステージ嫌いかも。

 

・システムと噛み合わないランダム成長要素

本作は過去FEシリーズに関わっていた堀川将之さんがゲームデザインを手掛けているそうなのだが、そのおかげかレベルアップ時の成長がランダムとなっている。

 

前述のようにSRPGとしてはFEシリーズ以上に詰将棋のようなバランスとなっており、1行動で敵を倒せるか倒せないかどうかで難易度が劇的に変わるのだが……特に序盤は筋力が上がれば確殺、体幹が上がれば敵の攻撃が0ダメージという状況で、とにかくランダム成長と相性が悪いなと感じた。

レベルアップ時は最低2ピンはする(したはず。基本的にHPと能力1つ)のでリセマラも面倒な性分な為そのまま進めたが、槍の攻撃役であるルグが一番筋力が低く体幹が高い壁役な成長をしたり、サブで壁をやらせたいグレンがまったく体幹上がらずで割りと困ったりしていた。

 

一応ステージ内で敵を倒した際の経験値以外に、ステージクリア時にもらえる経験値を出撃前の準備画面で割り振ってレベルアップするという手段があるため、そこでだけ成長を厳選するとかはしようと思えばやりやすそうだった。

 

・とにかく最後までやりくりが厳しい武器消耗度システム 

武器はFEシリーズ同様使うと耐久値が減り、0になると使い物にならなくなる(一応振れるが、攻撃力も命中率もガタ下がりとなる)

修理もできるだけ温情ではあるのだが、買うより高いというバランス。

拾えるアイテムも(1ステージを除き)すべて拾って進めていたにも関わらず、常にお金が足りないという状況で、ショップにステータス永続増加のアイテムが並んでも一度も買えなかった。

 

一応クリアしたステージに再度潜れる遊撃戦といういわゆるフリークエストもあるのだが、なんだかだ修理費用にも困りながら、騙し騙し手持ちにあるものだけでうまくやりくりするのも滅びゆく世界の傭兵団らしいな……と思いながら、ストーリーだけで進めてなんとかクリアした。

 

これは厳しいと書きつつも、世界観と雰囲気を表現するのに一役買っていてポジティブよりな要素。

戦闘バランスも厳しいので初期武器だけでちまちま戦うといった事も許されず、ここぞという場面で強い武器を投入する必要もあるのが良かった。

 

最終ステージなんかはここが踏ん張りどころだぞ!!! とステージ中に叫ぶ(今更だけど、ステージ中それなりに掛け合いとかもあってこれがまた良い)キャラに相応しい武器を惜しみなく持たせて突っ込むのは、もう後の戦いを考えていないまさに最終決戦という気持ちになれてかなり燃えた。

 

ただ、やっぱり敵のHP1残しで倒せず、余計にもう1回殴って武器の耐久度を減らしながら倒したときにはランダム成長を恨んだ。悪いのはランダム成長。

 

・総評としては、硬派なSRPG好きな人向けにしっかり作られたゲーム

ストーリー部分に関してだけはハッキリ残念と言えるし、システム的な部分も一部練り込まれてないなと感じる所もあった。

 

それであっても良くも悪くもシンプルなSRPGの楽しさが詰まっており、シンプルに作られた本作ならではの面白さも十分に感じることが出来た。

総評として、雰囲気に引かれて飛びついた硬派なSRPGプレイヤーに向けてしっかり作られた良作だった!