ぶるどり

遊んだゲームの記録

LOOPしたくなさ∞、「LOOP8」(ネタバレあり)

2023年6月1日発売。

カルト的な人気を誇る、23年前にPSで発売された『高機動幻想ガンパレード・マーチ』を世に送り出した、芝村裕吏氏の手掛ける最新作が『LOOP8(ループエイト)』である。

 

本作は<ケガイ>と呼ばれる厄災が度々世界を襲い、人類はその度に逞しくも復興を成し遂げていくという、あたかも神話のような繰り返しを現代まで続けているという世界。

主人公は宇宙にまで逃げ延びた人類の一員であったが、八ヶ月前に起きた厄災では宇宙ステーションすらも破壊され、辛くも宇宙から逃げ落ちた主人公は、家族を失いながらも親戚の伝手で「葦原中つ町」という町に辿り着くのであった。

 

・エモーショナルAI「カレルシステム」

本作のウリの一つ。ガンパレでも同様のシステム(流石にPSの頃からシステム自体が進化はしているらしいが)が用いられており、キャラクターの感情・行動がAIで制御されている。

 

仲良くなると町中を歩いてるだけでちょっかいを出してきたりしてとてもかわいい。これは精神的に幼いタイプだけど平安辺りに生きてた女の子が神の御使いになったベニ! かわいい。かわいいけど精神的に幼いままなのが惜しい。

 

町中もいくつかのエリアに分かれておりキャラクターも各々の意思を持って散らばっているのだが、最初のうちは朝は必ず授業に出席するため学校に居たようなキャラも、気がつけば主人公のいるエリアに自分から移動してくるようになったりするのが、なんとなく嬉しい感じになれたりして良い。

 

また、主人公と仲の良いキャラが複数集まったり、仲の悪いキャラ同士がいると「ギスギスした空気」となり、仲の良いキャラと2人だけだと「ラブラブの空気」になったり等、その場の雰囲気で会話のしやすさ・しにくさが変化したりする。

 

魅力にあふれるキャラクター、目に見える仲の良さ・悪さ、その場の雰囲気といった要素によって、ギスギスしてるのに2人だけの世界で仲良くしたり、初手お父さんと呼んでくる不審美青年とラブラブの空気の中で訓練したりすることで、その場その場のやりとりに色々と想像を膨らませたりして楽しめる余地があり、この点は素直に評価できる楽しさだった。

 

スクショ振り返って思ったけど、一緒に訓練するの大分仲良くなってからなので、訓練した時のスクショがラブラブの空気のものしかなかった。ラブラブしすぎ。

ちなみにこのテラスさん、本当におばあちゃんなので突然気分はおばあちゃんになったりする。夏にだけ会える不思議なお姉さん属性持ちでおばあちゃん、良いですね。でも惜しむらくは、別にそこまで精神年齢が高いわけではなく年齢相応。

主人公であるニニの住んでいた宇宙ステーションはケガイから逃れるというコンセプトだったので超高速で移動しており、時の流れが地上と大分異なっていて気がつけばこんな大きな孫が……という経緯らしい。ネタバレありって書いたのでどんどんネタバレしていくスタイル。

つまり、例えば30代で孫が生まれておばあちゃんになったからといって精神年齢がおばあちゃんかというと、そうではないよね的な感じのおばあちゃんです。おばあちゃんという役職と、精神年齢がおばあちゃんかどうかはまったく違う概念ということですね、勉強になります。

 

・ゲーム体験に影響を与えたとは言い難いAIシステム

このAIシステムは公式サイトにおいて「プレイヤー毎にゲーム体験が異なる上、プレイを繰り返す上でイベント等も大きく変化する!」と大々的に宣伝されているものの、正直そこまでの影響を与えたとは言い難い。

 

ゲーム進行のしやすさを優先したものと思われるが、その日の会話回数が少なければ会話の提案はほぼ成功して仲を深めていくことが出来る。

この会話回数補正がかなり高く設定されている(2回目以降は成功率が下がっていき、最終的にはどれだけ仲が良くても成功しなくなる程である)ため、仲の良いキャラと日常を過ごすというのが難しいゲームシステムとなってしまっている上、「その日出会ったキャラにはとりあえず話しかけて仲良くなっておこう」というのが効率良いプレイスタイルとなっている。

会話バリエーションも好感度が200、400、600、800、1,000それぞれで発生する固定イベントがメインでAI制御されている部分は非常に少なく、2周目は成功する提案をポチポチするだけの作業に近い形となってしまった。

 

大体感覚としてはときメモっぽく、それはそれで目に見えた数値が上がっていくのが楽しいというのはあるものの……既読スキップもなく、イベントスキップも10秒が5秒に短縮される程度という令和の時代に不便極まるシステム周りがお出迎えしてくれる為、とにかく作業感が凄まじいことになっている。

好感度を上げるだけの作業を感情があるはずのAIに対して繰り返すというのがもったいなさ、相性の悪さなんかを感じるのかもしれない。

 

勿論これをループする毎に繰り返すことになるのだが、2周目以降は好感度に初期ブーストが入ってるため、一度話すとリアルで10分くらいは好感度200~1,000までの会話を聞かされて1日が終わる×12人分をこなしてからさあやるか、とかいうゲーム体験がはじまる。

LOOP8という作品名であり、8月を何度もループするというテーマがあるにも関わらずLOOPしたくなさ∞のシステムとなっており、どうしてこうなってしまったのか疑問である。今上手いこと言ったかもみたいな気分になったのでこれをタイトルに使おう。

 

ちなみにこのプレイスタイルで進めていたら必ずこうなる。おしまいだ(ガンパレで言うところの原さん枠がいるので最終的に原さん枠かコノハどっちかと話せなくなる)

 

・すべてを無に帰すTRUE END

初クリア時にPS5の上から2番目のトロフィーがもらえたし、雰囲気的にもいわゆるTRUE ENDだと思われるのだが……。

今まで仲良くしてきたベニは、テラスさんは一体どこに……?

どちらかのエンディングがはじまると思っていたのだが、重ねてきた交流をすべて無に帰す形で主人公とコノハだけのエンディングになって感情が無になった。

 

最後の選択肢で全てを救ったらそうなったので、恐らく世界だけを救えば個別エンドに入れるのかもしれないが、ええ……となった。というかコノハを救うって選択肢もあるのにTRUEがこれって何? いや、そういうもんだと受け入れるしかないが……。

もしあるにしても、個別エンドの為に他キャラ殺さなきゃいけないのはちょっと嫌だなあの感情で結局やる気がどんどん無くなり、無理してこれ以上やらなくても良いかとなった。

 

・令和に出すRPGとしては最低品質

PS5でプレイしたのだが、最後までずっとこれが続く。なお、4ステージ目辺りから雑魚が1撃で倒せなくなるので果てしなく面倒になる。

オート戦闘もないし、ただ決定ボタンをポチポチしてこのモーションを1戦闘1分近くかかるのを何度も見せられるとか正気か?

 

もちろんボス戦闘時もずっとこれが続く。ラスボスもなんか裏でボーカル付きのBGMが鳴ってた気がするが何も頭に入ってこなかった。虚無である。

 

ちなみに、戦闘で死んだらキャラがロストするシステムも導入されているらしいのだが、決定ボタン連打してもっさり演出を眺めるだけのソシャゲ以下の戦闘で人死にが出るわけないので何もかもが噛み合ってなかった。RPGとして見たら間違いなく2023年で最低の作品になってしまうので、RPG部分は何も考えない方が良い。

 

幸い、無駄に時間がかかるだけでRPG部分は全体の2割程度くらいには留まっている。あくまで演出だと思った方が良い。演出なのに日常パートの足枷にしかなってないので救いがないのだが。

 

本作の敵はケガイという名前からも分かる通りケガレであり、日本神話をバックボーンとしたゲームとしてケガレを祓うとかそういう感じで描きたいものがあるというのはわかるのだが……なんかこう、もうちょっと……なんとかならんかったか……他キャラとの関係性が一定値以上だと勝利ルート、以下だと敗北ルートとかテキストだけで進める形の方が良かったんじゃないかなあ。

 

・令和に蘇りきれなかったガンパレの亡霊

日常パートはキャラクターの魅力がめちゃくちゃ描かれており、作品全体に漂う雰囲気なんかも文句なしに面白い。

しかしながら繰り返し遊ぶレベルに達しておらず、1周目は我慢できた出来の悪さが2周目以降苦痛と鳴って押し寄せてくるという具合で……ジェネリックガンパレにすらなれなかった、劣化ガンパレとしか言えないかなという辺りが総評となります。