2022年11月1日アーリーアクセス開始。
本作はダークファンタジー・シティビルダーと銘打たれており、ジャンルとしてはざっくり表現するとローグライトのサバイバル・シティビルドとなる。
勝利/敗北条件が定められている1プレイ1時間程度の街づくりを繰り返し、報酬として得られるリソースを使って様々な要素をアンロックしていきながら、更に高い難易度の街づくりに挑戦していくというゲームだ。
・逃れ得ぬ災厄ブライトストーム、最後の砦スモルダリング・シティ
本作の世界は周期的に訪れるブライトストームと呼ばれる脅威により荒野と化してしまう為、人類の生存圏は女王の庇護下にあるスモルダリング・シティのみ。
プレイヤーである「総督」は女王の命により荒野へ赴き、開拓を行いながら得た資源やブライトストームによって失われた文明の遺物をスモルダリング・シティへ届ける事が目的。
スモルダリング・シティがブライトストームに耐えられるのは女王によるものすごい力のおかげなので権力が絶対的なものとなっており、開拓が遅れて女王の怒りが爆発したら時間切れで失敗、怒りが爆発するまでに満足させるくらいの成果を挙げられたら成功というわかりやすいお話となっている。
とにかくプレイヤーは女王の為に働き、貢ぎ、開拓した土地はブライトストームに飲まれ消えていくのでまた最初から開拓! というゲームサイクルを繰り返していけば良い。
・シティビルドの序盤を何度でも楽しもう!
「都市建設ゲームで、一番ワクワクするのは?」と聞かれれば、「新たな都市の基礎を築く瞬間」と答える人もいるでしょう。『Against the Storm』では、次第に発展していく世界の中で、既存の都市と交流や交易を行いながら、新たな居住地を何度でも作ることができます。
Steamのゲーム紹介から丸々一文を引用したが、本作はまさにこのようなゲーム体験となっている。
開拓を開始すると倉庫と焚火だけが設置された木々に囲まれた広場に放り出されるので、まずは木こりを配置して森を切り開いていくこととなる。
霧に包まれた広場には様々な資源やイベントがランダムに配置されている為、森から取れる木材で家を建てたりしつつ周囲の広場を開けていくのが基本的なムーブとなる。
資源は住民の食事や機嫌を満たす食事になったり、加工することでお金に変えたり、成果として女王に貢げるようになったりする。
イベントは広場で見つかったものを自分たちで使って開拓の質を高めるか、女王に貢いで成果とするかを選べることが多い。
基本的に序盤は住民が飢えないように食事を優先しながら開拓を安定させていき、余裕ができて来たら成果として貢ぐという形になるので、サバイバルシティビルドゲームの序盤を安定させるまでの楽しさが毎プレイ楽しめるという作りになっている。
その上で、一定の成果を挙げると褒美を貰えるので序盤から貢ぐ必要もそれなりにあったり、女王の怒りも一定静まるので時間切れが近い場合はブチギレる前になんでも良いから成果を上げる必要も生じたりする(納期が近いので中身は全然出来てなくても画面だけは見栄え良くしてその場を乗り切るみたいなやつ、仕事か?)ので、状況を見ながらある程度は攻めの姿勢も重要となったりするところが面白い。
・様々なランダム性と取捨選択はまさにローグライト!
広場から出てくるランダムな資源やイベントをどのように用いるか取捨選択しながら進めていくプレイ感覚はまさにローグライト的であるが、もちろんこれだけでなく、他にも様々なランダム要素が存在する。
開拓初期は家や素材を収穫するための施設程度しか作れない状態から始まり、女王の褒美等で獲得できるランダムな設計図の中から1枚ずつ選び、建てられる施設の種類を増やしていくこととなる。
施設の中には大別して農園施設、生産施設、それと住民の士気を高めたり(士気が減ると住民が死んだり逃げたりする)作業速度アップ等の様々な恩恵を得られるサービス施設がある。
大半の施設は加工品である板材・煉瓦・生地のいずれかを消費して建築する為、まずはこの3種を効率良く作れる生産施設が狙い目。
また、食料が自給自足出来るとかなり安定するので農園施設も優先度は高いのだが、畑を作れる広場が見つからなければしばらく使えないというデメリットがあったりするので後回し……にしたら、畑を作れる広場は見つかったのに農園施設が建てられず泣いたりする。
サービス施設は主に後半必要になってくるのだが、恩恵の内容次第では序盤でも活躍したりする。
女王からは定期的に指令も届いたりする。
これは遅延によるペナルティは特になく、内容は家を数軒建てろといった簡単なものから、特定の加工品をいくつ献上しろ、金をよこせといったものまで様々あるがとにかく報酬が美味しい。意外とアメとムチを使いこなす女王である。
女王の機嫌も良くなれば新しい設計図をもらえてやれる事も増えていくので、序盤はまず何より達成出来るものを達成するというのが重要。
設計図の選択と指令の選択は自由なタイミングで行える為、設計図と指令を見比べながらの取捨選択がこのゲームの肝であると言える。
他にも要石という、1ターン(ゲーム内の1年)毎に無条件で得られる恩恵もある。
これも種類が様々である為、設計図や指令に合わせたり将来を見越して選んだりする必要がある。
そして本作には種族が5種類存在するのだが、プレイ毎に種族がランダム選出(初期に1種か2種選択+開拓を進めるとランダムで追加される)となっており、開拓毎に最大3種の種族で開拓を行うこととなる。
種族はそれぞれ得意な事や、好みの食事や娯楽が決まっている。
・農業が得意で士気の高い人間
・伐採や木材の加工が得意なビーバー(実質ドワーフ)
・狩猟や火の扱いが得意なリザード
・特殊な加工品や衣服の生産が得意なハーピー(かわいい)
・探索や水の扱いが得意なフォックス
例えば、人間・リザード・ハーピーだった場合は食料自給を人間とリザードに任せ、ハーピーの加工品で勝利を目指す……(そう上手く行くとは限らないが)といった計画を立てる必要が生じるため、前述の指令や施設はそこに上手く組み合わせていく事となる。
個人的には木こりは必須なのでまずビーバー、肉を焼いて食べれば士気を維持できるリザード、広場のイベントが得意なフォックス辺りが好き。高難度では女王の怒りを抑えられる能力をこっそり持ってる人間もかなり重要。
正直ハーピーは使い所がわからないので、かわいいから嬉しいという感じ。かわいいは正義。過酷な世界ではかわいいだけじゃ死んでしまうのが悲しいね……。
・繰り返しプレイによるアンロック要素も充実!
開拓が終わると成功失敗に関わらず(もちろん成功したほうが報酬が多いが)報酬を獲得し、それらのリソースを使うことで次回の開拓をより充実したものにすることが可能となっている。
単純に住民が強くなったり、初期の資源が増えるといった便利なものから、ランダム選出である施設や要石の種類を増やすことでやれることを増やしたり出来る。
開拓の難易度もかなり天井が高くチャレンジングなものが用意されている為、これらの要素をアンロックして高みを目指していくのが楽しいゲームとなっている。
・総評:あくまでローグライトがメイン、シティビルドはサブのゲーム
ローグライトのサバイバル・シティビルドという新たなジャンルを生み出した上、バランスも丁寧でプレイサイクルも含めて非常に完成度が高いと感じる本作であるが、シティビルダーとして評価した場合は欠点が存在する。
前述のように本作は勝利/敗北条件が定められているシティビルドとなっている為、体感的には「やっと生産ラインを軌道に乗せることが出来た! いよいよこれから増産態勢に入るぞ!」といった頃には勝利/敗北が決定している。
開拓勝利後にその開拓地での生活を続ける選択肢はあるものの、作れる施設はランダム選出であるため自由度はそこまで高いとは言えない。
トコトンまで勝利を目指して取捨選択を楽しむローグライトのジャンルがシティビルドだったというゲームで完成され尽くされているため、合う合わないが露骨にわかれる可能性があるという点は記載しておく必要があるだろう。
また、ある程度慣れてくる/難易度が上がってくると勝つためのパターンに向けて取捨選択するという形になりがちな為、結構飽きやすいゲームでもあるかなとも感じた(50時間以上遊んでまだまだ遊べるなという感覚はあるものの、難易度がこれ以上高くなってもやることは変わらなそうだと感じたので切り上げた)
なんというか、遊んでいる間はハースストーン等のDTCGを多少のカード入れ替え等はあるもののこれと決めたデッキを使い続けてレジェンドを目指す、みたいなゲーム体験に近いと感じたので、もしかするとカードゲーマー向けかもしれないです。